4.カキ果皮からβ-クリプトキサンチン含有物の抽出と食品への応用

カキの有する機能性成分の有効利用により,消費者の健康増進とカキの需要拡大が目的である.カキは発がんを抑制すると言われるβ-クリプトキサンチンを含んでいる.生100 g当たりのその濃度は,甘柿の富有(Diospyros kaki L.f.'Fuyu')果肉0.97 mg,果皮8.36 mg,渋柿の愛宕(Diospyros kaki L.f.'Atago')果肉0.80 mg,果皮8.80 mgだった.干し柿加工時の残渣である果皮(Diospyros kaki L.f.'Ichida')を用い,実用的なβ-クリプトキサンチンの抽出方法を研究した.β-クリプトキサンチン含有の抽出液を食品添加に用いる場合,抽出にはエタノールかエタノール水溶液を抽出溶媒として用いなければならない.その方法で行った抽出液のβ-クリプトキサンチン濃度は78.4 mg/100gであった.抽出液は,ジュース加工時の加熱に耐え,アイスクリームやヨーグルトに溶解できた.β-クリプトキサンチンを含む抽出液は,乳化剤の使用で分散したので,β-クリプトキサンチンはあらゆる飲食品に混和できることが示唆された.

著者
高橋 英史、稲田 有美子、井土 良一
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,27,29-36(2009)

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