37.嚥下困難者用食品の創生を志向した,ゲル化しにくい魚肉すり身の物性制御

2020年度研究助成 (2021年度研究実施)

高齢者の増加に伴い咀嚼・嚥下困難な者が増えている.嚥下困難者は栄養不足に陥りやすく,タンパク質の欠乏は免疫能の低下や易感染性,薬物の副作用などを引き起こす.高齢者に好まれる魚介類は良質なタンパク質源だが,咀嚼・嚥下困難者には食しづらいといった問題がある.本研究では誤嚥しにくい魚肉練り製品の開発を目的とし,未利用資源である亜麻仁搾油残渣が魚肉練り製品の物性を改良しうるか,基礎的な検討を行った.脱脂された亜麻仁粉末から水溶性画分を抽出し,各種条件下でプロテアーゼ阻害活性を調べた.また,この水溶性画分をホキすり身に添加して加熱,ゲル化した後,魚肉タンパク質分解の指標となるミオシン重鎖の残存量を評価した.その結果,亜麻仁水溶性画分は熱耐性,pH耐性,塩耐性を有しており,魚肉ゲル形成の条件下でもプロテアーゼ阻害能を発揮できることが確認された.また,亜麻仁水溶性画分をホキすり身に添加してゲル化した際に,ミオシン残存量が増加したことから,亜麻仁水溶性画分は内在性プロテアーゼによる魚肉タンパク質の分解を防ぐことで魚肉ゲルの物性を制御しうることが示唆された.

所属
日本大学 生物資源科学部
著者
山口 勇将
出典
東洋食品研究所 研究報告書, 34, 273-276 (2022)

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