33.概日リズムの制御を基盤原理とした収穫後青果物の品質変化メカニズム解明とその利用

2020年度研究助成 (2021年度研究実施)

収穫後の葉菜類野菜は,周期的な光照射によってクロロフィルなどが保持され,概日リズムシステムと品質との関連性が示唆されている.しかしながら,概日リズムの中心となる時計遺伝子発現にまで踏み込んだ研究はほとんどない.そこで本研究では,明暗環境に貯蔵したホウレンソウを対象とし,時計遺伝子及び光受容体遺伝子発現がアスコルビン酸(AsA)代謝に及ぼす影響を検討し,品質保持メカニズムにおける概日リズムの役割について考察した.
供試材料は水耕栽培したホウレンソウを用い,24時間暗期(24D)および12時間明期/12時間暗期(12L/12D)の2つの光条件下で,栽培温度と同じ21℃で48時間貯蔵した.リズム解析のため,収穫前24時間から4時間おきにサンプリングし,遺伝子発現解析に供した.AsAは12時間毎にサンプリングし,HPLC法を用いて定量した.
収穫から48時間後のAsA残存率は,24D貯蔵では約70%,12L/12D貯蔵では約40%となり,周期的な光照射によってAsAの減少が抑制できた.各遺伝子間の偏相関係数では,昼方位相遺伝子SoPRR5と朝方位相遺伝子SoLHYがAsA合成に関与していると示唆された.また光受容体に関しては,SoPHYABよりSoPHYAが概日リズムの維持およびAsA合成に関係する可能性が示された.

所属
岐阜大学 応用生物科学部
著者
タンマウォン マナスィカン
出典
東洋食品研究所 研究報告書, 34, 247-253 (2022)

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