01.マッシュルーム(Agaricus bisporus)の成熟に伴う呈味・抗酸化成分の変動

自家栽培したマッシュルーム成菌(フラット)と幼菌(ボタン)比較した.マイクロ波加熱調理品の官能評価では, 甘味と嗜好性は同等で,旨味は明らかに成菌が強かった.味認識装置では,成菌の味わいが僅かながら強いと示された.

成熟に伴って,トレハロースは減少したが,元来多量に含まれるマンニトールが更に増加し,糖の総量とショ糖換算値は,いずれも成菌がやや多かった.一方,アミノ酸では旨味が強いグルタミン酸の増加と,苦味アミノ酸の減少が見られ,呈味核酸ではイノシン酸のみが減少した.旨味成分を相乗効果も加味して算出するEUCでは,明らかに成菌が高く,成菌の旨味が強いという官能評価と一致した.総ポリフェノール含量は抽出溶媒・温度で異なり,また成熟に伴う明確な傾向はなかった.成菌で総ポリフェノールは約5%,抗酸化力が高いエルゴチオネインは約20%低かったが,DPPHラジカル消去活性に差はなかった.

以上,日本では流通・消費されていない成菌は,呈味,抗酸化性において,一般に流通している幼菌と特段に劣るところはなく,より強い旨味のあることが示された.よって,ことさらに成菌を忌避する理由はほぼないといえる.海外と同様に成菌が消費されれば,収穫適期の拡大による生産増加など,農業の振興にもつながると考えられる.

著者
加瀬谷 泰介、遠田 智江、星子 英次郎
出典
東洋食品研究所 研究報告書,31,1-9(2016)

刊行一覧