02.イチジク茶の食品安全性に関する検討

イチジク葉を緑茶と同じ製法で加工したイチジク茶について,安全性に関する幾つかの調査を行った.

(1)急性毒性:投与可能な最大量の茶葉粉末をマウスに単回投与したが,死亡や異常は認められなかった.(2)変異原性:微生物を用いて復帰突然変異の発生頻度を調べたが,影響は認められなかった.(3)フロクマリンの挙動:イチジクの葉は光皮膚炎を引き起こすフロクマリン,およびその前駆物質を含んでいる.イチジク葉の主要フロクマリンはプソラレンで,その前駆物質はプソラル酸グルコシドである.茶葉のプソラレン含量は,生葉の1/10程度に減少していたが,プソラル酸グルコシドの含量は生葉と同程度であった.プソラル酸グルコシドを,ヒトの胃内を想定した条件下(塩酸濃度0.19M,40℃,6時間加熱)に置いたところ,一部(モル比で約6%)が加水分解されてプソラレンとなった.

以上より,イチジク茶には急性毒性や変異原性は認められないが,多量の浸出液を飲むとプソラレンによる光皮膚炎等を発症する可能性のある事が分かった.

著者
高橋 徹、沖浦 文
出典
東洋食品研究所 研究報告書,31,11-18(2016)

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