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日本缶詰協会 第56回技術大会で発表しました。

発表要旨を掲載します。

「摺動レトルトによる殺菌効果の検証」

大型容器のレトルト殺菌では殺菌時間が極めて長くなる問題がある。この解決手段として、振盪装置を後付けできる摺動式レトルト殺菌機が上市され、この方式により殺菌時間の短縮効果が期待できることが見出されている。ここでは、その殺菌効果の検証を行い、得られた知見について報告する。

①パウチ詰製品の厚みと所定殺菌値を得るために必要な殺菌時間の関係  静置殺菌では、製品厚みに対して2次関数的に必要殺菌時間が長くなった。  摺動殺菌では、個食用のような薄いものについては、摺動による殺菌時間短縮のメリットがほとんどないが、業務用のような大型のものについては殺菌時間短縮のメリットが得られることが認められた(ただし、容器容量に対して内容物充填量が多い場合や、内容物の粘度が高い場合は撹拌効果が小さくなった)。

②センサーで測定された『見かけの』殺菌値(Fp値)と  指標菌の死滅挙動により評価された『真の』殺菌値(F値)の比較  大型パウチにカレー並の粘度のモデル液を適正量充填した条件にて比較したところ、F値とFp値はほぼ似たような値となり、Fp値は信頼に足ることが認められた。しかしながら、摺動殺菌は静置殺菌よりも同じFp値であってもF値が小さく、変敗率を考慮すると、静置殺菌で設定されているFo値をそのまま流用することができない場合があることが考えられた。

「β-クリプトキサンチンの利用効率を高める柿果皮の乾燥法」

〔目的〕 柿果皮にはカロテノイド類の一つであるβ-クリプトキサンチンが多く含まれている。β-クリプトキサンチンの抽出・利用を効率良く行うには、原料となる柿果皮をその歩留りが高い状態で保管する必要がある。嵩が減り運搬の利便性から、天然物原料の保管には乾燥法が一般的に用いられる。そこで、生の柿果皮を乾燥させる場合において、最もβ-クリプトキサンチンの歩留りが良くなる最適な乾燥温度と乾燥時間を見出すことを目的とした。

〔方法〕乾燥は雰囲気温度を50、80、100、120、150℃として乾燥機を用いて行った。乾燥の終了は試料が明らかに湿っていない点とし、各温度における乾燥時間および乾燥前後の柿果皮重量を計測した。β-クリプトキサンチン濃度は、柿果皮を粉砕してエタノール抽出を行い、水酸化カリウム水溶液を加えてケン化後、HPLCを用いて測定した。測定後、各乾燥条件における柿果皮中のβ-クリプトキサンチン量を見積もった。

〔結果〕 柿果皮の乾燥による重量変化は乾燥温度の違いに依存せず、いずれの乾燥温度でも乾燥前の重量に対して約20%まで減少した。各乾燥温度での柿果皮の乾燥時間は、50℃・210分、80℃・75分、100℃・45分、120℃・35分、150℃・25分であった。

乾燥前後で柿果皮中に含まれるβ-クリプトキサンチンがどの程度変化するかを調べた結果、生果皮中のβ-クリプトキサンチン量を100としたとき、乾燥後のβ-クリプトキサンチン量は50℃・210分乾燥で71.1、80℃・75分乾燥で77.1、100℃・45分乾燥で74.0となり、100℃以下の乾燥ではβ-クリプトキサンチン残量は70%以上で乾燥温度による大きな違いはなかった。また、120℃以上で乾燥させると50%以下となり大きく減少することがわかった。

さらに、HPLCを用いて乾燥によるカロテノイド組成の変化を調べたところ、80-100℃で乾燥させると一部のカロテノイドが構造変化するため、わずかに新たなピークが現れたが大きな変化はなかった。また、120℃以上の乾燥では全体的にカロテノイド濃度は減少し、溶出時間の早い化合物(極性の高い化合物)では酸化等による構造変化や分解が生じ顕著なピーク変化が見られた。

以上から、乾燥時間が短くβ-クリプトキサンチンの歩留まりが高くなる最適な乾燥条件は100℃で45分間と考えられる。

「透明容器詰柑橘飲料における光劣化異臭」

PETボトル詰柑橘果汁飲料において、蛍光灯照射1日で異臭を発する事例があった。異臭試料の揮発性成分分析を行い、各種のカルボニル化合物を異臭成分として同定した。当所農場産果実を用いて種々の試料を調製し光照射試験を行ったところ、いずれの柑橘においてもこれらの異臭成分を生成することがわかった。さらに未熟で青玉の果実において急速な光劣化が起こった。この原因としてクロロフィルの光増感作用により光劣化が促進されることを確認した。

さらに異臭成分の前駆体を調べた。柑橘果実を果皮・果汁・種子に分けて調製した溶液に光照射を行ったところ、果皮および種子試料から異臭成分を生成することが分かった。これらの部位が脂質を多く含むこと、異臭原因物質が脂質劣化成分として知られることから、不飽和脂肪酸を前駆体と推測した。このことを確かめるため、不飽和脂肪酸を添加したクロロフィル含有モデル液に光照射試験を行ったところ、異臭成分が生成した。このことから植物組織に含まれる脂質が前駆体となっていると考えられた。

この柑橘の光劣化異臭はいずれの柑橘でも生じる危険がある。対策を検討したところ、ビタミンCの添加や酸素バリア性容器の使用などが有効であった。以上のことより、透明容器詰柑橘飲料を製造する際には適切な処方及び品質管理が必要であると思われた。

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