1.缶詰専用種桃の貯蔵に関する研究

近年、我が国では缶詰専用桃品種の栽培が急速に増加し、既に昭和33年度の総栽培面積は3,000町歩に達する。この大量の果実を缶詰工場で限られた期間に完全に処理することは容易ではない。この状況から著者らは缶詰専用黄肉桃を用いて貯蔵試験を行った。

呼吸量は常温状態では、冷温状態の約6〜8倍にも相当するCO2を排出していることが判った。このことは冷温よりも6〜8倍果実成分の消耗が早いことを物語っている。

冷蔵貯蔵の場合、傷害果または、病虫被害果は、貯蔵1週間位の中に腐敗果となり、その後は僅かな蒸散作用による減量があるに過ぎない。

冷蔵果実の缶詰は、常温貯蔵に比して果実の色沢がやや淡黄の嫌いがある。これを濃黄色にするため行った冷蔵果実の常温下における追熱は失敗に終った。果色改善のためには、冷蔵前に常温下で追熱を計り、後冷蔵すべきである。

冷蔵による貯蔵最長限は、約20日間位で、15日間は果色、組質、風味等極めて良好であった。但し、経済的に20日間は貯蔵可能である。

著者
松本 熊市、澤山 善二郎、堀 四郎
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,1-8(1959)

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