43.茸類の生化学的研究-Ⅶ
ヘミセルロースの分解1

マッシュルームの小麦培地および子実体よりへミセルローズ分解酵素を抽出し、部分精製を試みた。また稲わらより抽出精製したへミセルローズに作用させて、当酵素の一般的性質を検討した。

1.当酵素の稲わらへミセルローズに対する作用はpH4.8、温度50℃において最適を示した。

2.pHに対する安定性は3.4〜5.4であり、温度に対する安定性は45℃10分の処理では影響はないが、50℃以上では急速に不安定となり、70℃以上10分の処理では失活した。

3.塩類による影響はNaClによって活性化されるが、他の塩類では殆んど影響されなかった。0.4M NaCl添加のとき活性は最高を示した。CaC12は濃度の増大と共に阻害作用を示した。

4.稲わらヘミセルロースの分解産物として反応初期にはグルコース、アラビノースらを検出するが、進行と共にキシロビオース、キシロトリオースが著明となり、キシロースの生成がなく、キシロオリゴ糖を生成するので当酵素はエンド型であると推定する。

マッシュルームは、その培地中に多量に存在するヘミセルロースを菌体外に分泌したへミセルラーゼによりオリゴ糖に分解し、さらに共存する他の酵素によって単糖に分解し、菌体に吸収され細胞形成や、エネルギー源として利用されるものと考えられるが、詳細についてはさらに検討をしたい。

著者
橋本 一哉、磯部 信昭、高橋 善次郎
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,359-368(1967)

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