6.缶詰上部空隙内酸素ガスの変化-Ⅱ
スズ箔、及びアルミニウム箔の内面二重塗装缶に詰めた缶詰ハッサクミカン(Citrus hassaku,Hort.ex Tanaka)果汁の暗色化、ならびに缶の上部空隙酸素ガ

加糖ハッサクミカン果汁を種々内部構成の違った200g缶に充填し、30℃に貯蔵して、上部空隙内の酸素ガス濃度、及び真空度の変化、ならびに果汁の暗色化の進行程度を比較観察した。その結果、

1.上部空隙内の酸素ガスは無塗装缶では一週間以内に消失した。無塗装缶以外の缶詰の上部空隙内の酸素ガスは23日間の貯蔵期間内では何れも略等しい勾配の直線を描いて6%程度にまで低下、次の貯蔵後62日目の試験の際には検出できなかった。

2.缶底にアルミニウム箔を貼付けた二重塗装缶では硝酸塩の添加有無に関係なく、殆んど真空度を消失していた。缶底にスズ箔を貼付けた試験缶詰では、このような現象は見られず、両者における水素過電圧の差異によるものと考える。 無地缶では硝酸塩を添加したものだけが何れも水素膨脹缶となった。その間、真空度曲線の低下開始時と鉄の溶出曲線の急昇開始時が符号していた。水素過電圧の低い鋼板面腐食の開始に伴う水素ガスの発生を考えることによって説明できる。

3.貯蔵時における果汁の暗色化の進行に対する無地缶の抑制効果は最も大きく、本試験期間中に限っていうならば、少しく退色傾向が感ぜられた。スズ箔は硝酸塩の如き腐食性の薬剤の存在によって活性化され、抑制効果を示す。アルミニウム箔には効果が認められなかった。

著者
木村 圭一、児島 宏枝、衣裴 寿子、志賀 岩雄
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,36-45(1969)

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