19.貝類缶詰の緑変に関する研究-Ⅰ
缶詰かきの緑色色素の分離と物理化学的性質

1.缶詰かきの緑色色素が胆汁色素、クロロフィルあるいは銅とのキレート化合物のいずれに由来するかを調べた。

2.緑色色素を塩酸アセトン混合溶液で抽出し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィーおよびSephadex LH-20によるゲル炉過にて分離精製した結果3成分に分けられた(それぞれ緑色色素1、2および3と略称)。これら3つの色素はいずれも245、415、600および655mμに吸収極大を持っており、緑色色素1と2は油状、緑色色素3は粉末であり、ほぼ20:1:10の割合で得られた。

3,薄層クロマトグラフィーでは緑色色素lと2とは同一のRf値を示すが、緑色色素3のRf値は前二者と全く異なる。

4.分子量は緑色色素1が約700、3は約1000であると推定される。

5.緑色色素はいずれも胆汁色素に対する反応およびニンヒドリン反応は陰性、螢光反応は陽性であった。転溶性試験では、いずれの色素も水に不溶性で、また緑色色素3はエタノール、石油エ一テルに不溶性であるが、他の有機溶剤にはいずれの色素も可溶性あるいはやや可溶性である。

6.以上の結果より、缶詰かきの緑色色素はビリベルジンあるいは銅とのキレート化合物とは明らかに異なり、クロロフィルaともやや異なっていることを認めた。

著者
長田 博光、大塚 滋、志賀 岩雄
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,129-138(1969)

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