5.カキ果皮抽出物摂取による肝臓でのインスリンシグナル伝達経路に関する遺伝子発現の変化:2型糖尿病Goto-Kakizakiラットを用いたDNAマイクロアレイ解析

カキ(Diospyros kaki)は東アジアで非常によく知られた果実である。カキ果皮はほとんど利用されていないが、カロテノイドやポリフェノールなどの抗酸化物質を多く含んでいる。我々はカキ果皮から脂溶性の抽出物を調製し、その抽出物を混合した飼料(PP食)を、2型糖尿病モデルGoto-Kakizaki(GK)ラットに12週間投与した。PP食を投与するとGKラットの肝臓中にβ-クリプトキサンチンが検出され、血漿中グルタミン酸ピルビン酸転移酵素(GPT)活性が普通食投与したGKラットに比べて有意に低下した。また、DNAマイクロアレイ解析により、PP食投与は肝臓の遺伝子発現を変化させることが分かった。特にインスリンシグナル伝達経路に関与する遺伝子群では発現変化した遺伝子数の割合が有意に高かった。さらにPP食投与によりインスリン受容体βサブユニットのチロシンリン酸化量が増加することを明らかにした。これらの結果から、カキ果皮抽出物の摂取はインスリン抵抗性を改善する可能性がある。

著者
井土 良一、中井 雄治、高橋 英史、牛尼 翔太、岡田 晋治、三坂 巧、阿部 啓子
出典
東洋食品研究所 研究報告書,29,37-49(2013)

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