6.食品中の硝酸塩による缶内面スズ異常溶出に関する研究-Ⅱ
トマトジュース缶詰のスズ異常溶出量とpHの関係

100%果汁であるトマトジュースに天然物中に含まれている硝酸塩、硝酸カリウムを添加した缶詰を製造し、経時的に開缶測定を行ないスズの異常溶出問題を検討した。

1)スズの溶出は硝酸カリウムを硝酸塩として添加した場合には急速に進行するが、天然物中に含まれている硝酸塩添加の場合には若干遅延し、徐々に進行する。

2)天然物中に含まれている硝酸塩でもオレンジジュースに認められたのと同様にスズの異常溶出の主要原因であり、硝酸塩量とスズ溶出量との間には明らかな相関が認められた。

3)天然物中に含まれている硝酸塩によるスズの異常溶出はpHが低いほど早期に起り、pHが5付近になるとスズの溶出速度は遅延する。また硝酸塩の減少はスズ溶出量と関係があり、pHが低いほど急激に減少し、pHが5付近では減少は遅延する。

4)各pH毎のスズ溶出量の総和の平均値をもとめるとpHが3〜5の範囲内ではpHとスズ溶出量との間に明らかな逆の相関が認められた。

5)果実、蔬菜類缶詰では、使用水中の硝酸塩量のみならず原料中の硝酸塩含量にも注意が必要であり、トマトジュース缶詰の場合はpack前のジュース中の硝酸性窒素量は3ppm以下が望ましい。

著者
岩本 喜伴、宮崎 正則、国里 進三、前田 琇子、堀尾 嘉友、小村 祥子
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,35-42(1967)

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