14.γ線照射高分子フィルムの紫外線透過率曲線

著者らはかねてから各種透明フィルムの波長220〜380mμにおける紫外線透過率を手動式EPB-u型日立分光光度計によって測定し、それを方眼紙にプロットして透過率曲線を画いてきた。

本報では60Coによるr線を照射したフィルムについて、その各々の波長における紫外線透過率の変化(すなわち透過率曲線の形と位置の変化)と、さらにそれらの経時変化との実験結果を報告する。

(i)高分子物質のフィルムにγ線を106r以上照射すると着色するものがあり、また肉眼では着色が認められないものもあるが、大抵は紫外線透過率が低下している。

(ii)塩化ビニルと塩化ビニリデン樹脂のフィルムは照射によって褐色になり、そののち時経過するほど色が濃くなる。 紫外線透過率も低下するばかりであって、止まるところがない。分解によるためであろうと一応考えられる。

(iii)ポリカーボネートも照射によって着色し、始めは逓減し、数日後からは逆に回復に向い、透過率が次第によくなる。

(iv)因みに無機ガラスは照射直後が紫外線透過率は最低であって、時日の経過とともにしだいに回復に向かう。このガラスの着色はラジカルが残存するためであると説明されているが、ポリカーボネートの着色についても同様の説明が可能であろうか。今後さらに研究を進めるつもりである。

著者
松井 悦造、清水 義弘
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,94-99(1969)

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