10.食品製造環境由来のBacillus cereus の菌株タイピング

Bacillus cereus は食中毒原因菌としてよく知られているが,芽胞を形成し,容器包装詰食品の変敗原因菌でもある.自然環境や食品原料に広く分布し,芽胞の殺菌剤への抵抗性が高いため,無菌包装食品での潜在的な制御対象菌である.

汚染防止対策をとる上で重要な菌株タイピングの手法としてMultilocus Sequence Typing(MLST)を採用し,無菌包装食品の製造環境より分離された菌株について系統学的解析を行った.

供試14菌株より9つの新規な配列型(ST)が見出され,同一の分離源の3組の菌株が相互にごく近縁な菌株であることが判明した.セレウリド(嘔吐毒)産生遺伝子をもつ1菌株は米飯からしばしば分離されている配列型であった.MLST法は無菌包装食品でのB. cereus 汚染制御にも有用と考えられた.

著者
遠田 昌人、遠田 智江
出典
東洋食品研究所 研究報告書,29,79-83(2013)