9.各種プラスチック・フィルムに包装されたブドウ果皮抽出液の変色に関する研究

各種プラスチック・フィルムに密封した赤ブドウの果皮の水による抽出液について、その包装保存中の変色を検討した。

一般にブドウ果皮の色素はアントシアン系のものとして知られている。この色素はpHの変化によって色が変る。またこの色素は加熱によって容易に赤紫色から褐色に変る。

本実験では、キャンベル・アーリー種ブドウの黒紫色果実の果皮を水とともに絞って得た液を、各種プラスチック・フィルムで作った袋に入れて密封し、暗所各温度に保存、および明所に保存したのち、pH、糖度、重量滅を測定するとともに、紫外部および可視部における透光率曲線中の消長によって、その色の変化を調べた。

ブドウの果皮を水とともに絞った赤紫色の液は、暗所で保存した場合、保存温度が高いほど褐変の度合が大であった。

室内の明所と暗所とで保存したものを比較すると明所保存のものがやや褐変したが、試料を置いた個所の温度の相違も考えられるので、褐変には少しばかり光が影響したと思われる。

使用したプラスチック・フィルムのうち通気性の小なるものと大なるものとがあったが、これらで密封包装して保存したブドウ果皮抽出液の褐変にはその区別がつけられなかった。恐らくフィルムを通して酸素が包装内にほとんど侵入して来なかったものと思われる。

著者
松井 悦造、清水 義弘
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,54-60(1971)

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