7.偏性嫌気性フラットサワー変敗原因菌の同定*1

コーヒー缶詰及びしるこ缶詰の偏性嫌気性(O.A.)フラットサワー変敗原因菌52株の性状は,硝酸塩の還元能以外はすべて同じであり,2グループに分けられた.主な性状はグラム陽性,桿菌,偏性嫌気性,胞子形成,好熱性,ガス非産生,亜硫酸塩還元,硫酸塩非還元である.Bergey's manualによると,胞子形成,桿菌,そして,偏性嫌気性ということから,分離菌株はClostridium属またはDesulfotomaculum属に属するものと考えられた.現在これら属中には好熱性菌は6種承認されているが,GC含量,硫酸塩還元能,及び栄養要求性から,分離菌株はClostridium thermoaceticum に最もよく類似していた.さらに分離菌株の各グループの代表菌株と参考株(Clostridium thermoaceticum DSM 521)との比較研究の結果,形能的,培養的,及び生化学的性状には大きな相異はみられず,O.A.フラットサワー変敗原因菌はClostridium thermoaceticumと同定された。

*1新しいタイプのフラットサワー変敗(第7報)

所属
*京都大学農学部水産学科
著者
中山 昭彦、門田 元*、園部 順子
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,16,51-63(1985)