7.ミカン缶詰の白濁防止におけるヘスペリジナーゼ活性に及ぼす残留塩素濃度の影響

市販のミカン缶詰を開缶試験した結果,白濁を生じ,シラップにヘスペレチン-7-グリコシドがほとんど検出されない缶詰を認めた.この白濁原因について検討した.

へスペリジナーゼ溶解液に酵素活性を阻害する残留塩素が含まれているものと想定した.そこで残留塩素がへスペリジナーゼ活性に対しどの濃度で影響を及ぼすか検討した.その結果,残留塩素のへスペリジナーゼ活性に及ぼす阻害は0.3mℓ/ℓの濃度で80%,0.7mℓ/ℓの濃度で95%と通常水道水に含まれている濃度で強い阻害を示すことが明らかになった.実缶試験で確認した結果,0.5mℓ/ℓの残留塩素を含む水にヘスペリジナーゼを溶かし製造した缶詰で白濁が生じた.このことから通常の水道水に含まれる残留塩素濃度でミカン缶詰に白濁の生じることが明らかになった.従ってへスペリジナーゼによるミカン缶詰の白濁の防止には酵素溶解水中の残留塩素をあらかじめ除去することが必要である.

著者
朝賀 昌志、毛利 威徳
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,18,49-55(1990)

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