19.ICP発光分析法による缶詰食品中のスズの定量

缶詰食品中のスズの定量には,原子吸光分析法あるいは比色法が一般的に用いられているが,ICP発光分析法ではダイナミックレンジが広く,測定試料を希釈する操作を必要とせず,また原子吸光分析法に比べて干渉も少ない.そこでこの方法によって缶詰食品中のスズを定量する方法を検討した.測定は13種類の缶詰食品について行った.測定試料の調製は湿式分解によった.ホモジナイズした缶詰食品の一定量を三角フラスコに秤取し,110℃で乾燥し,濃硝酸で加熱分解した後,更に濃塩酸を加えて加熱する.その分解液をメスフラスコに移し定容後,標準添加法により分析した.その結果,試料数5における変動係数は0.9〜10.3%となった.また分解前にスズを50,250ppmに添加した試料をそれぞれ5試料ずつ分析することによって回収率を求めた.回収率は93.9〜109.4%の範囲で,平均99.2%となり,ICP発光分析法は缶詰中のスズの定量に対し迅速で実用的な方法であると認めれた.

著者
隅谷 栄伸、末兼 幸子、中谷 文、達家 清明
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,20,155-160(1994)

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