飲料容器密封性評価のための迅速LC-MS検知法の考案

背景・目的

海外では食品の高圧加工処理によって、1ヶ月前後の賞味期限を保証した生果汁製品が開発されており、将来的に日本への輸入販売あるいは国内生産が予想されています。その際の安全性の課題の一つに容器密封性があります。高圧加工処理では数千気圧という膨大な圧力の瞬間的な変動がキャップと容器口部ノズルのはまり具合(嵌合性、かんごうせい)に影響し、場合によっては漏れが生じ、菌等の異物に汚染される恐れがあります。そこで容器密封性を評価する方法を考案し提供することを目的に実験を行いました。

方法

純水を充填した容器を、水溶性有機物(例えばクエン酸)を含む水の入ったパウチに詰め、高圧処理後にボトル中の水をLC-MS 装置で測定することにより、外部の水が容器に入ったかで密封性を検査します (図1)。

モデル容器として250mL容量の角形PETボトルを用いました。容器にイオン交換水を充填し、キャップを巻き締め密封します。その際の嵌合性の指標となる巻き締め角度を3段階(345゜、365゜、385゜)としました。更に木綿糸をキャップに噛み込ませ、故意に漏れのある容器試料も別途調製しました。それらのボトルを20w/v%クエン酸の入ったパウチに密封し、600MPaで高圧処理後、容器内の水をLC-MS装置でクエン酸の有無を測定しました。

結果

通常の密封試料からクエン酸は検出されませんでしたが、故意に漏れさせた試料から、クエン酸の吸い込みを確認できました。更に巻き締め角度が浅いほど吸い込み量が多いことも評価できました(表1)。

また、微生物学的なリスク評価の考え方ですが、漏れがあるということは容器内に水が侵入することになりますので、その侵入水量をリスク評価値と考えます。一般にレトルト殺菌後に塩素殺菌しない冷却水を使った場合に、1mL中に細菌が100個いると言われています。すなわち10μL中に細菌が1個となります。従って、容器への侵入水量は10μL以下が最低目標と考えます。そこで、今回の条件で20w/v%クエン酸水溶液を用いて容器の充填水量が250mLであった場合、計算上1ppmのクエン酸を検出した場合の侵入水量は1.25μLと計算されます。それを適用し、侵入水量を換算した結果から変敗リスクの大小を評価することができます。

以上の結果から本法はこれまでにない密封性評価手法となりうることが示唆されました。

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図1.評価方法の概略

表1.測定結果とリスク評価のための侵入水量の算出

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