6.アサリ(Venerupis semidecusata. Deshayes)水煮缶詰の黒変に関する化学的研究(第2報)

アサリ水煮缶詰黒度の原因として化学的機構と細菌学的機構があげられている。また無機リン酸が触媒的作用を持つという報告があるが、今回我々は、これら含硫アミノ酸のうち特にシスチンを取りあげ、このシスチンを加熱したとき硫化水素の生成がどのようになるか、またpHの変化がシスチン分解にどのように影響を及ぼすか、さらに糖、無機リン酸が存在するとどのような影響があるかについて実験したので以下にその結果を報告する。

1.生アサリにはシスチン,システインを約5%含んでいてこの一部が加熱によって分解をうけ硫化水素を生成する.

2.シスチン分解に対して、グルコースは溶液が中性のとぎあまり影響はないが溶液がアルカリ性の場合には相当大きく影響を及ぼす。

3.無機リン酸が存在するとその量に比例してシスチンの分解を促進する。

4.高温に保存するとシスチンは漸次分解し多量の硫化水素を生成する。

5.缶内面のみの黒変は、シスチン,システイン等の含硫アミノ酸の分解によって生ずる。

著者
長田 博光、岡屋 忠治
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,41-46(1963)

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