7.各種プラスチック・フィルムで包装密封した薄切りパンの保存実験

スライスした食パンをポリエチレンの袋に密封して保存すると数日のうちに必ずカビが生えるが、無包装のまま室内に放置すると、水分は蒸発するが、カビはほとんど生えない。

包装材料の選択また包装後何等かの処理をすることにより、包装パンの防カビが可能であるかについて実験した。

本実験では、まず各種フィルムの通気性および透湿性を実測した。食パンをこれらのフィルムに密封包装して保存すると、透湿性の実測値が小さいポリエチレン、ポリプロピレンで包装したパンは水分がフィルムを通して外部へ逸散することが少なく、内部が多湿の状態を保っているのでカビが生えやすい。透湿性の大きなポリカーボネート、ポリアミドで密封包装したパンはフィルムを通して水分が外へ逃げることが多く、パン自身が乾燥した。硬質塩化ビニルはその中間の測定値であって、パンの乾燥の度合もまたその中間であった。包装密封したパンに少しばかりの処理、すなわち80℃の加熱、紫外線、赤外線またはγ線を照射することにより滅菌してカビの発生を防ぐことができた。フィルムの透湿度は温度が高くなると増大することは実験中にしばしば認められた。電子レンジを使って加熱殺菌しようとしたが、包装内のパンが加熱されて水蒸気の発生が激しく、ガス膨張のためすぐに破袋してしまうため密封包装のままでは実験できなかった。

著者
松井 悦造、清水 義弘
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,43-47(1971)

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