6.プラスチック・フィルムの対溶剤性

包装食品を保存中に、包装材料から食品へ何か溶出するものはないか、また食品から包装材料へ移行するものはないであろうか?

これを実証することば現在の段階では極めて困難である。

本実験ではフイルムを溶剤に漬け、取り出して室内放置しておくと、大抵の場合は溶剤が蒸散してフイルム巾には何も残らないのであるが、ポリ塩化ビニルとポリ塩化ビニリデンのフイルムではベンゼンとトルエンが残存した。これらは可塑剤、安定剤のようないわゆる軟化剤が加えられている種類の樹脂である。ベンゼンやトルエンが残らなかったフイルムは、ポリエチレン、ポリアミド 6、およびポリカーボネートであって、いずれも他のものを加えることなく、この樹脂だけで可撓性があり、またヒートシールできる種類のものである。

紫外線透過率曲線(UVスペクトル)では試料に第二の物質が少量混在していると、鋭敏に特有の吸収曲線が現われる。これに反して赤外線透過率曲線(IRスペクトル)は多量に存在する物質において初めてその独特の吸収が現われるのである。本実験で微量の混在物質を検出するのに紫外線透過率を測定したのは適当であったと考える。

著者
松井 悦造、清水 義弘
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,38-42(1971)

刊行一覧