本テーマでは、食品製造や調理操作の合理的な設計に貢献することを目的に、調味成分の移動現象の定量的な解析を試みている。2024年度は,食品の組織構造が調味成分の拡散現象に与える影響の解明を主目的とした。細胞組織構造をもたないゲル状物質としてアガロースゲル、細胞組織構造を有する食品として蒸煮魚肉を、調味成分として塩化ナトリウム(NaCl)を選定し、両試料中におけるNaClの有効拡散係数の推算を行い、計算値と実測値の比較を行った。計算値と実測値は、立方体の外縁部と中間部ではよく一致した一方で、中心部ではわずかに実測値の方が高かった。しかし、中心部での乖離は味覚として検出できる水準よりも低かった。得られた結果は、有効拡散係数が食品への調味成分の浸透量の予測に十分活用できることを示唆するものである。