ポモル酸の投与がラット肝臓の遺伝子発現に及ぼす影響

背景・目的

 カキは日本全国で生産されている私たちになじみ深い果物です。カキは干し柿に加工される際に大量の果皮が廃棄されていますが、健康効果のある成分が多く含まれていることから機能性食品素材としての利用が期待できます。これまでに私たちは、カキ果皮に含まれるポモル酸(図1)に抗肥満作用が期待できることを培養細胞試験により見出しています。そこで、ポモル酸をラットに摂取させ、生体でどのような変化が生じるかを、2万遺伝子以上の発現変化を同時に検出して解析する手法(トランスクリプトーム解析)により調査しました。

ポモル酸図1.png

図1ポモル酸の構造

実験方法

5週齢オスのラットを1週間の飼育環境に慣れさせた後に、高脂肪(41 %(cal/cal))・高コレステロール(2 %(w/w))・高フルクトース(30 %(w/w))(HFC)飼料群と、0.01%(w/w)ポモル酸を添加したHFC飼料群の2群に分けて、10週間自由に摂取させました。試験終了後、血液検査と摘出した肝臓からtotal RNAを抽出して、ポモル酸を摂取していないラットと摂取したラットの肝臓で発現する遺伝子に違いがあるかを調査しました。

結果・考察

血液検査結果ではポモル酸を摂取したラットの方が肝機能マーカーであるALT活性がやや低く、インスリン分泌能の指標であるC-ペプチド濃度がやや高いことが示されました。この結果から、ポモル酸を摂取したラットの方が肝臓の損傷が少ないこととインスリンが多く分泌された可能性があることが分かりました。

次に遺伝子発現を解析した結果(図2)、脂肪酸や中性脂肪の合成、中性脂肪の分解や脂肪酸の分解(酸化)、コレステロール取込などが活性化していることが分かり、脂質のエネルギー利用が活発になっていること、グリコーゲン合成の活性化など糖のエネルギー利用は抑えられていることが推定されました。ポモル酸摂取は脂肪燃焼の促進と血糖値の上昇抑制効果が期待できます。一方で免疫に関連する因子は全体的に抑制されていると推定され、抗炎症効果に繋がることを期待しています。今後はポモル酸の摂取による健康効果を明確にして、カキ果皮の有効利用につなげていこうと考えています。

ポモル酸図2.png

図3トランスクリプトーム解析により推定されたポモル酸による影響

赤色は増加や活性化、青色は低下や抑制を示す

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