水耕栽培における植物生長促進根圏細菌の利用

背景・目的

植物工場における作物生産は1980年代にミツバから始まりました。現在ではミツバのほぼ全てが植物工場で生産され、リーフレタスでもその約20%が生産されるなど一般的になってきましたが、照明や空調の電力費による生産コストが高いことや水耕栽培ゆえに食味・香味が薄いなどの課題があります。

私たちの研究では、こうした課題に対し、植物の生長を促進するなどの効果が認められている微生物である植物生長促進根圏細菌(Plant Growth Promoting Rhizobacteria;PGPR)を用いた改善を試みています。

結果

これまでに、ミツバおよびリーフレタスを対象に、土壌より分離したPGPRを与えて水耕栽培を行ったところ、生産物の生長促進および栄養成分の含量増加などの現象が認められています。

ミツバについては、収穫の目安となる草丈(20 cm)に達する日数がPGPR添加で6日間短くなり、年間あたりでは3回の栽培回数増加に繋がると考えられました(図1)。

サニーレタスでは、収穫時の新鮮重量がPGPR添加で1.5倍に増加しており、栽培期間が3割短縮可能である可能性があります(図2)。

今後はPGPRの効果が発揮される栽培対象の拡充を図るとともに、PGPRの最適な使用方法の検討やメカニズムの解明などに取り組みます。

図1. ミツバに対する生長促進効果(草丈)

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明期:20℃-16時間、暗期:15℃-8時間、湿度未制御
光量子束密度:150 μmol・m-2・s-1
大塚化学A処方10 L、PGPR:6 log CFU / 10 L
定植後40日間栽培、草丈を経時的に測定

suikou03.jpg

図2. サニーレタスに対する生長促進効果(新鮮重量の相対比)

suikou01.jpg

栽培条件はミツバと同一、収穫時に新鮮重量を測定

菌株#地上部地下部
1回目2回目1回目 2回目
対照 1.0 1.0 1.0 1.0
111 2.1 1.8 1.0 1.1
167 1.6 1.5 0.9 1.1
74 1.7 1.5 1.1 1.5

・地上部新鮮重量が1.5倍に増加

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