4.プロテオーム解析によるイチゴヘタ離れ因子の探索

加工用イチゴ品種'ベニヒバリ'は高いヘタ離れ性を有した品種であり,収穫時の作業性に優れている.しかし1株当たりの収量が低いという欠点がある.イチゴのヘタ離れ形質における遺伝率は高く,遺伝的因子によって制御されていると推測できるが,イチゴは8倍体の染色体を持ち,遺伝様式が複雑であるため,順遺伝学的な手法による遺伝的因子の探索は困難である.そこで,プロテオーム解析により,ヘタ離れに関与する因子の探索と機構の解明を試みた.

品種・熟度によりヘタ離れ性の異なる果実を用いて,プロテオーム解析を行った結果,84種類のタンパク質に発現差異がみられた.中でも,エチレン合成関連酵素がヘタ離れ性の高い果実で顕著に発現していた.ヘタ離れ性の低い果実では,細胞壁構成成分の合成関与酵素が含まれていた.これらの結果から,ヘタ離れ性の高い果実では,より多くのエチレンが生成されることにより,周辺組織の軟化がおこりヘタ離れが起こりやすくなったと推測している.

著者
阿部 竜也、高橋 徹
出典
東洋食品研究所 研究報告書,28,27-32(2010)

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