3.イチゴヘタ離れ性と細胞壁特性の関連調査

当研究所で交配育種された加工用イチゴ品種'ベニヒバリ'は,ヘタ離れ性が高いという特性を持っている.'ベニヒバリ'ヘタ部における発現タンパク質の網羅的解析から,ヘタ離れ性品種のヘタ部組織の細胞では,セルロースや不溶性ペクチン含量が多い細胞壁が構築されているとの仮説を立てた.

ヘタ離れ性品種では,破断が起こるヘタ部と果実部の間で水溶性ペクチンの含量が大きく異なっており,両組織間の細胞接着力の差が大きいことから,この境界部に,収穫時の応力が,かかりやすいことが推察された.一方で,'ベニヒバリ'は,セルロース量が増加していたが,他のヘタ離れ性品種では同様の傾向を見出せず,ヘタ離れ性との相関は得られなかった.X線CTスキャン装置による組織構造観察から,ヘタ離れ性品種の細胞は,非ヘタ離れ性品種より大きく,細胞壁が薄いことを明らかにした.

結論として,収穫時に果実部・ヘタ部の境界面に応力がかかりやすく,またその領域の細胞が力学的に弱いことから,細胞の破断を引き起こし,ヘタ離れが起こることが推察された.

著者
阿部 竜也