7.Moorella thermoacetica 芽胞の発芽挙動

加温販売低酸性飲料の変敗原因菌である高温偏性嫌気性芽胞菌 Moorella thermoaceticaの芽胞の発芽挙動を調べた.発芽挙動を調べるためには,純度の高い精製芽胞が必要である.平板培地で形成させたコロニーを掻き取り,調製した菌液を加熱処理,リゾチーム処理,SDS処理により,純度95%以上の精製芽胞を調製した.精製芽胞を用いて,変法チオグリコレート培地中55℃での発芽試験を,濁度低下,耐熱性消失,位相差顕微鏡観察で行った.いずれの評価方法でも,芽胞は20分で発芽がはじまり,60分で大部分の芽胞が発芽,120分でほぼ発芽は完了した.発芽に対する温度やpHの影響を調べた.発芽の最適温度は,発芽速度では60〜65℃であった.しかし120分後の濁度低下程度は55℃が最も大きく,60℃,65℃と温度が高くなると低下程度は小さくなった.これは,芽胞全体の中に,より高温で発芽しにくい芽胞が存在することを示唆している.発芽の最適pHは6.5〜8.0であった.

著者
青山 好男
出典
東洋食品研究所 研究報告書,30,49-54(2014)