08.変敗食品由来のSporolactobacillus属菌の再同定

いわゆる有芽胞乳酸菌Sporolactobacillus属菌は容器包装詰の酸性飲料および食品において,芽胞細胞が加熱殺菌を生残して変敗の原因となる.有芽胞乳酸菌は分類学的には,Sporolactobacillus属はSporolactobacillus inulinusのみが記載されており,以前,当所で変敗食品より原因菌として分離した菌株についても,その性状から便宜的にS. inulinusとして同定されていた.これらの菌株について,染色体DNAの16S rRNA遺伝子領域の塩基配列解析に基づき再同定を試みたところ,S. pectinovoransS. putida,および S. spathodeaeないしはその近縁グループと同定された.S. pectinovoransと同定された2菌株について,次世代シークエンサーを用いたマッピング解析を行ったところ,共通して欠失している遺伝子領域が認められ,変敗を発生する性質と何らかの関連性があることが示唆された.

著者
遠田 昌人
出典
東洋食品研究所 研究報告書, 32, 51-55 (2018)

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