25.遠縁交雑を介した雑種化のメカニズム解明と次世代果樹品種の作出

2021年度研究助成 (2022年度研究実施)

遠縁交雑は、種や属の壁を越えた交雑を可能にすることで多様性を飛躍的に増加させる技術である。これまでの雑種研究は交雑障壁の機構とその打破を中心として、種分化経路の解明や新規雑種の獲得に関して多くの知見が得られている。一方で、雑種個体の農学的利用を見据えた場合には、雑種形成後に生じうるゲノムや遺伝子発現の変化と表現型との関連性を十分に理解する必要があるものの、雑種個体を対象にした研究例は限られている。本研究では、バラ科の主要果樹であるニホンナシとセイヨウナシの種間雑種を用いて、雑種個体の果実における遺伝子発現や香気成分を中心とした表現型の多様性を調査した。ガスクロマトグラフィ質量分析の結果、種間雑種で生合成が増加する香気成分、あるいは新規に合成された可能性のある候補成分が検出された。一方で、果実のRNA-seq解析では、多くの遺伝子が種間交雑の影響で発現変動する可能性が示唆され、複数の雑種個体の比較によって、共通して発現変動する遺伝子を特定した。以上の結果から、これまでに知見が乏しかった遠縁交雑に伴う内的環境の変化について、果樹を研究モデルとして雑種化による共通発現遺伝子を同定し、雑種化のメカニズム解明とそれを利用した品種改良に繋がる重要な成果を得ることができた。

所属
京都府立大学 生命環境科学研究科
著者
森本 拓也
出典
東洋食品研究所 研究報告書, 35, 151-155 (2025)