食肉中にはミオグロビン(Mb)、ヘモグロビン、シトクロム等様々なヘム色素が存在する。それらヘム色素は食肉の色調に大きく関わっており、食肉の色調を評価する上で重要なファクターと言える。全ヘム色素を抽出するためにアセトン−塩酸混合溶液が用いられている。これは濃度75%アセトン−0.7%塩酸を用いて試料中のヘム色素を全てヘマチンの形にして抽出・定量を行う方法である。肉のpHの違いによる色調の変化を評価するために幅広いpHとなるよう調整した試料からヘム色素を抽出する場合にも本塩酸濃度が適応できるか調査した。
その結果、緩衝液(pH4.1~11)に溶解したMbから抽出した全ヘム色素量において検量線を作成し、その傾きに有意差は認められなかったため、pHが異なる場合もヘム色素の抽出効率および分解等の悪影響は見られず、同一の検量線を使用できると推察された。また、抽出時の中和反応から生成される塩も抽出効率に影響しなかった。pH4.4およびpH無調製(pH5.6~5.7)の肉試料では抽出溶媒中の塩酸0.4~1.6 mL(0.7~2.8%)で結果に差が認められず、pH10.5では塩酸0.8mL(1.4%)で最も多くのヘム色素を抽出できる傾向にあったが0.7%と大差なかった。これらの結果から、塩酸0.7%が適用できると推察された。
- 著者
- 稲田 有美子
- 出典
- 東洋食品研究所 研究報告書, 35, 71-73 (2025)